「ずらす」と「づらす」について、発音は同じですが、書く場合には、どちらが正しいのでしょう。
これら二つの表現には、細かな違いが存在します。
この記事では、二つの言葉の違いや、使い方について、詳しく説明します。
「ずらす」とは?
まず、先に結論ですが、正しい表記は「予定をずらす」です。
これは自動詞「ずれる」から派生した他動詞で、特定の物体や予定などを、意図的に移動させる際に使用されます。
「ずれる」は自動詞として、何も操作しなくても発生する動きを指しますが、「ずらす」は何かを積極的に移動させる意味を持ちます。
なぜ「づらす」と書かれることがあるのか?
「づらす」という表記が見られるのは、「ず」の音と「づ」の音の発音が似ているために混同してしまうからです。
実際には、正しい表記は「ずらす」であり、「づらす」は一般的には誤りとされています。
例として、次のような誤表記も見られます。
正 | 誤 | |
---|---|---|
築く | きずく | きづく |
訪れる | おとずれる | おとづれる |
絆 | きずな | きづな |
融通 | ゆうずう | ゆうづう |
しかし、「づ」を使う正しい例も存在します。
例えば、「片付け」(かたづけ)や「お小遣い」(おこづかい)など、特定の語彙や表現では「づ」が適切です。
実は、これらに関しては、文化庁が、そのルールを公開しています。
5 次のような語は,「ぢ」「づ」を用いて書く。
(1) 同音の連呼によって生じた「ぢ」「づ」
例 ちぢみ(縮) ちぢむ ちぢれる ちぢこまる
つづみ(鼓) つづら つづく(続) つづめる(約△) つづる(綴*)
[注意] 「いちじく」「いちじるしい」は,この例にあたらない。文化庁 現代仮名遣い 本文 第2(表記の慣習による特例)
(2) 二語の連合によって生じた「ぢ」「づ」
例 はなぢ(鼻血) そえぢ(添乳) もらいぢち そこぢから(底力) ひぢりめん
いれぢえ(入知恵) ちゃのみぢゃわん
まぢか(間近) こぢんまり
ちかぢか(近々) ちりぢり
みかづき(三日月) たけづつ (竹筒) たづな(手綱) ともづな にいづま(新妻) けづめ ひづめ ひげづら
おこづかい(小遣) あいそづかし わしづかみ こころづくし(心尽) てづくり(手作) こづつみ(小包) ことづて はこづめ(箱詰) はたらきづめ みちづれ(道連)
かたづく こづく(小突) どくづく もとづく うらづける ゆきづまる
ねばりづよい
つねづね(常々) つくづく つれづれ
簡単に言うと、単語に「づ」を使うパターンは二つ。
一つは「同じような音が続く場合」、もう一つは「二つの語がくっつくことによって生じた場合」です。
そして、上記二つの場合以外には、「ず」を用いるのです。
「予定をずらす」に関しては、上記の二つとも当てはまりません。なので、「ずらす」が正しい表記なのです。
「ずらす」の抽象的な物への使用例
「ずらす」は、物理的なものだけでなく、抽象的な概念に対しても使われます。
例えば、以下のようなものがあります。
- 椅子を部屋の他の場所にずらす。(物理的)
- 会議の開始時間を午後にずらす。(抽象的)
- 視点を変えて問題を異なる角度からずらす。(抽象的)
類義語の言い換え
「ずらす」の類義語には、以下のような言葉があります
- 動かす
- 移動する
- 位置を変える
- 延ばす
- 延期する
- 移転する
これらの言葉は、「ずらす」と同様に、物や予定などを別の位置や時間に移す意味合いで使われます。
具体的な文脈に応じて最適な言葉を選ぶことが重要です。
まとめ
この記事では、「ずらす」が適切な表記であることと、その使い方や類義語について詳しく解説しました。
「づらす」と誤って使われがちな点も明確にし、日本語の正確な使い方を伝えることを目指しました。
日本語の表現を豊かにし、コミュニケーションをスムーズにするために、これらの知識を日常生活やビジネスシーンで活用していきましょう。